====== 二つの目 ====== 季節はずれでスマンが、冬のある日、近所の山にある池に行った。 夕方頃になった。暗くなり始めたので急いで車に戻ろうと、歩いて5分程の距離を歩いた。 その道は鬱蒼と木々が生い茂って昼間でも薄暗い。 夕方ともなると、真っ暗と言えば言い過ぎかも知れないが、かなり暗い。 その時・・・、真冬の寒さの中、ある場所を通った瞬間生暖かい空気が顔にあたった。 同時にただならぬ危機感を感じた。 顔を上げてはいけない。本能でそう思った。 木々の生い茂る遊歩道脇の山の斜面に何かの気配を感じながら、 しかし、けっしてそちらを見る事はなく足早に車に向かった。 斜面の草木が不自然にガサガサなっている。 (クマは生息していない地域です。) 内心焦りながらも、やっと車に到着して そそくさと乗り込んだ。 その時気づいた。 車がその山の斜面の方に向かって停まっていることを。 エンジンをかけ、ライトを付けた時、人間でもなく野生動物でもない 2つの目がライトにうつしだされた。 体は見えなかった。 全身に鳥肌が立った。 車を動かしてなんとか走り出した。 それは後を追って来ることは無かった。 車にも不調はなかった。 あれはなんだったのだろうか・・・。